小樽吟行
2009年12月23日水曜日 16:44
先月、北海道新聞の後援を得て、句会「舟」の小樽吟行が実現しました。参加いただいたのは、東京の句会メンバーと地元小樽近辺の方々。集合場所の小樽駅前から、いきなり散策の開始となった。初めに三角市場で巨大タラバ蟹と対面した後、文学館、小樽運河へと足を運ぶも、あいにくの凍てつく時雨。一行は、早々と運河沿いの倉庫街にある小樽ビール直営店・小樽倉庫No.1へ逃げ込んだ。醸造設備のあるビア・レストランとして観光客に親しまれており、僕も小樽へ来れば必ず寄る。ひとまず、ガラス越しにある運河側のテーブルへ着き、ピルスナーやヴァイス、ホット・ドリンクなどをそれぞれが注文した。
僕は北海道新聞小樽支社での講演会の時間が迫っていて、のんびりとほろ酔いながらの句作とはいかなかった。あわただしく記者の宮沢さんに案内されて会場へ向かう。確か50人程度の会議室と聞かされていたが、それにしては大勢いる。「紙面での告知は小樽版だけでしたが、結局100人ほどお集まりいただけました」と、受付の岩本記者。急きょ定員枠を増やしたらしい。なんだか有り難くて胸が熱くなる。テーマは例によって「水と酒」をベースの環境問題の予定だったものの、ほぼ酒場や俳句の話で終始した。たとえ一期一会でも、人の笑顔と接することは無上の喜びです。
そして、またまたあわただしく俳句会の会場・小樽の老舗蕎麦屋「籔半」(やぶはん)へ・・。二階座敷に設けられた句会の座が、ちょいと豪華な蕎麦会席膳ときた。そして、名物店主の蕎麦への拘りを一言いただき、おまけに純米吟醸の地酒までプレゼントしてもらって"いざ、短冊投句の開始"となった。ところが、ああっ、未だ主宰者の自分が一句も作ってない。そこで急場しのぎに、トイレ・タイムを要求。個室へ隠れて何とか規定の二句を捻ろうともがいた。途中、「学問は 尻から抜ける 蛍かな」の蕪村俳句が浮かんできて混乱するも、やっとのことで句会の進行に追いつけた。
全くの俳句初心者からベテランまでが揃うけれど、ほろ酔うての句会に緊張感はあまりない。東京からの遠征組を交えて和気あいあいと進む。一番人気の句は、小樽の大蝦蛄(しゃこ)を石原裕次郎風のセリフ口調で詠んだ岩本碇(いかり)さんの句「蝦蛄なぞに 惚れちまったぜ 小樽の夜」でした。小樽は裕次郎記念館や、駅に裕次郎ホームもあることから、粋な挨拶句として支持されたのでしょうか。
小樽を斜陽の商都と位置づける句や、"露人の青き声"なんてのもあり、さすが地元出身者ならではの表現と感心させられました。いずれにしても自分の推薦する句を披講(読み上げ)し、鑑賞の弁を述べたりするは、初心者にとっても愉しい経験だろう。そういう雰囲気を大事にしたいものです。
さらに、懇親会を兼ねた二次会が、地酒の品揃えで知られる居酒屋「わか松」にて開催。地元女流作家の蜂谷涼(はちや・りょう)さんなども加わって大皿を突っつき合った。盛り上がった宴席は、暖気の上る二階座敷のためか一層暑い。ついにクーラーへ切り替えてもらった。
僕のような暑がりにとって、北海道の室内の暖かさは格別。俳句仲間となった星野恵介さん(俳号:北星)から、後日送っていただいた自作のCD-Rジャケットに奇妙な後姿のシルエットがあった。なんと、良く見れば、夜の舗道を歩くシースルーの半袖Tシャツ姿の自分ではないか。隣にはしっかりと防寒コートを着た札幌在住の作家・喜多由布子(きた・ゆうこ)さんの後影が寄り添うかのようだ。とんでもないシルエット・ロマン。
聞くところによると、4次会か5次会の後に、ラーメンを求めて繰り出したものらしい。あ~あ、こんな恰好を小樽吟行にご助力いただいた永井千恵さんや北海道新聞の皆さんが見たら呆れるだろうな・・。えっ、道新記者のメンバーも一緒だったんだ~。
ラベル: 北海道