酒王 奥飛騨を往く@髙木酒造
2009年8月22日土曜日 21:09
岐阜県を愛知県側から北上すれば、平野の無い山間のインフラに沿って移動しなければならない。従って、旅人はたやすく方向感覚を失う。しかも、三重、愛知、長野、富山、石川、福井、滋賀と七つの県境に囲まれていて、山の向こうが、どの県かなど判らない。もっとも、埼玉県だって七都県に囲まれているものの、あちらは関東平野を目安とできる。
今回の旅は、高山本線と飛騨川に平行するかの益田街道・ルート41号を北上。下呂市金山町に在る髙木酒造を目指した。創業が江戸中期の享保5年という老舗の酒蔵だ。吟醸酒"奥飛騨"の銘柄名で知られている。もちろん、"十四代"の銘柄で有名な山形県の高木酒造とは違う。
屋根つきの杉玉が吊り下がった黒格子の蔵構えは、岐阜県の「まちかど美術館」にも指定されており、どっしりとした風格のある趣。江戸の旅人気取りでお邪魔した。土間は、そのまま、ちょっとした酒蔵博物館の様相を呈している。酒宴の献立表の長大な巻物まであった。
ついでに、酒造敷地の裏へ出たら、益田街道だった。街道沿いのドライブ・インや土産物店なども髙木酒造の経営。街道を挟んで迫る裏山も、やはり蔵の所有地という。「山裾に、合掌造りが見えるでしょ。あの中はレストランに改装してあるんですよ。移築したんです」と、髙木千宏社長がおっしゃる。そう言えば、合掌造りの白川郷は県の西北端に在りましたよね。
少々、あっけにとられながらも再び入り口の酒蔵へ戻り、幾銘柄の酒を試飲させて頂いた。純米吟醸無濾過生原酒の「初緑」は、さすが女将さんのオススメとあって、深い山里に咲く笹百合のような妙味が潜む。おそらく南部杜氏の技が効いているのだろう。う~む、この酒のツマミは、何としようか・・。
残念ながら宿泊する日程は取れず、滞在時間に余裕が無い。あの合掌造りの囲炉裏端か、下呂温泉の老舗旅館へ落ち着き、「初緑」を抱えて悩んでみたいなァー。西の白山、東の飛騨山脈と、数々の名峰を控えた万緑の迷路で、しばし途方に暮れました。
ラベル: 高木酒造