キンミヤ──「下町酒場の名わき役」が生まれるその場所へ

2009年8月11日火曜日 17:22

 名古屋から関西本線で南下、四日市へ向かった。桑名を経てしばらく行くと伊勢湾が近くなってくる。もう直ぐ、四日市だ。やがて、車窓の眺めは、広大な石油プラント地帯へと変わっていく。無機的ながら、近代産業の心臓部の一つと言える。

 果して、四日市駅へ降り立つも、がらーんとしたプラットホームに人影もまばら。トイレは正面玄関を出て右へ、とか書いてある掲示板が目にとまった。一瞬、正面玄関なる文面に戸惑ったが、トイレは正面改札口を出たら見つかった。駅頭を見渡しても、全く殺風景。キンミヤ焼酎の宮崎本店は何処に在るのだろうと、不安になった。もっとも、中心市街エリアは、近鉄線の四日市駅周辺だと判明。早とちりも、いいとこだった。

 

 キンミヤ焼酎は、清涼飲料・ホッピー割りのスピリッツとして、東京下町酒場で不動の地位を築いた。下町酒場巡りに久しい僕が、宮崎本店へお邪魔するのは自然の成り行きかも知れん。工場は、住宅地の広がる平地に在って、所在場所が少々分かり難かった。とは言え、酒蔵は蒸し釜の高い塔を目指せば辿り着くものの、銭湯の煙突と勘違いした経験もある。

  

sakao_08111.jpg  宮崎本店は、古い佇まいの酒造棟があちこちに続いていて、敷地面積の全貌をなかなかつかめない。まずは、応接室にて六代目社長・宮崎由至さんと七代目・ご子息との面談からだ。キンミヤ焼酎との付き合いが古い所為か、初対面の感じがしない。ただ、華美な趣味を排し、質素を旨(むね)とする生活心情の徹底振りには驚いた。後で、美しい社長夫人に伺ったことだが、若い頃の宮崎社長の靴は、たった二足だったらしい。

 

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sakao_08113.jpgsakao_08114.jpg  酒蔵の施設も、やはり派手な感じがない。むしろ、古いものを大切に使い込む謙虚な姿勢が清々しく思える。見学の後、蔵の酒「宮の雪」などを試飲させていただくも、キンミヤ焼酎の話題で白熱する。ホッピーとの相性の良さは、味香り戦略研究所のデータでも証明済されている。また、飲み仲間の間では、かねてよりキンミヤ焼酎のラベルの人気が極めて高い。明るいエメラルド色と、金色の亀甲型に縁取られた"宮"のロゴ文字が鮮やかでモダンだ。「ずいぶん昔のことなんで、誰がデザインしたか分からないんですよ」とは、宮崎社長の談。さらに、「宝酒造の大宮久社長とは親友でね。同じ原材料と製法ながら、宝焼酎とは味が違うから面白い、なんて話をしたもんです」と、続けた。無論、味の違いは、水の違いに他ならない。鈴鹿川の伏流水を仕込み水としているが、おそらく伊勢湾に近いこともあって、ミネラル分を含んでいるような気がする。焼津の酒造メーカー「磯自慢」も、同じく海のそばで、すっきり味がウリだ。ドライな口当たりは、ミネラル分を含む硬水の影響が知られている。あれこれと酒談義が弾むも、「そろそろ、話の延長は居酒屋で・・」と、一同の目が輝いた。

 

sakao_08116.jpg 一軒目、キンミヤ御用達の日本酒場「大感謝」へ、二軒目からは、社長夫人を交えて松坂肉を肉料理「徳寿」にて堪能。取材拒否で有名な店の主も、手を休めて挨拶して下さった。

 

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sakao_08118.jpg三軒目は、四日市名物・一口餃子で有名な中華料理「公園」へ。これほど小粒な餃子は初めて。ビールで流し込む。仕上げは、ワインと創作料理自慢のワインバー「flapper」へ。これが旨くて、白ワインのお代わり、お代わり・・。いいかげんに"お帰り"ってとこで、めでたくお開きとあいなりました。

  

sakao_08119.jpgアッ、五軒目に行った「かめ八寿司」を忘れていました。いやいや美味なる旬を、にぎっていただけたのに申し訳ございません。


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