"酒と水"

2009年10月12日月曜日 21:03

 旅先でも、やはり"酒飲みこそ歩くべし"を実践しています。そういえば、前回の福岡、西中洲取材の翌日も大宰府へ立ち寄りました。天満宮境内に隣接する九州国立博物館で開催されていた阿修羅展を観る目的です。多少の人混みは覚悟していたけれど、まあ、余裕のもてたご対面だったといえる。阿修羅像の印象は、しばし魂の奥へ安置しておきます。

 もちろん、大宰府天満宮へもお参りしました。天満宮本殿の中、神棚の中央に八咫(やたの)鏡が収まっていて、文字どおり太陽の輝きを放っている。鏡の正面から、延長線上のある位置に立つと、自分の小さな姿が映ります。そこで、カシャとデジカメで切り取りました。拡大して見るとやっぱり写っていましたね。なんだか菅原道真公に肖(あやか)れそうな気分を味わえるから面白い。


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 このところ"酒と水"をテーマに語ることが多くなりました。そのため、自然との共生、あるいは自然とのコミュニケーションのあり方に目を向ける機会が多くなる。日本列島のいたるところに清流と湧水のあった時代。それを過去のものとするか、未来に蘇えらすかの選択は、今の僕たちの営み如何で決まるからです。

 古代、海の漁師は飲料水の補給基地となる処を、海から望む陸地の形で判断できたという。舟が着けられる入り江内の河口付近なら、湧水にも恵まれているという訳だ。言うならば、停泊と給水の一石二鳥の場所が、やがて漁港にもなりえた。現在、日本列島の漁港の数は、大小合わせて3000近くあるらしい。それほど、水資源に恵まれていたってことですね。良質の水を必要とする酒蔵が、魚港のそばに多く在ることも納得できます。 

 以前、取材させていただいたキンミヤ焼酎で有名な宮崎本店だって三重県の伊勢湾内最大の商業港として発展してきた四日市港の近くにある。「うちの会社の周辺には、三十軒ほどの酒蔵があったんだよ」という宮崎社長の話が印象深い。仕込み水に出来た鈴鹿川の伏流水のたまものだろう。石油コンビナートと鈴鹿川・河口付近の湧水に頼る酒蔵の風景。実は、それほど遠くない。石油コンビナートの近未来的な光景と、良質な地下水脈を持つ日本列島。危ういなかにも底力を感じる。


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 静岡県のJR三島駅近くに、富士山の湧水で知られる柿田川がある。全長わずか1200メートルで、狩野川と合流する。源流から鏡の透明度を保ったまま、いきなり川幅は広がる。日に100万トン以上の湧水量を有し、30万トンが工業・農業・飲料用水に使われている。しかも周辺には住宅街が迫っており、湧水群のある源流部のすぐ上を国道一号線の走る環境だ。ドライブがてら、是非立ち寄って水の神秘に触れて下さい。その時、地元の焼酎と清酒も頂きました。


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