岩手を旅する2〜南部美人

2010年3月18日木曜日 13:00

 盛岡二日目の朝。昨夜のアルコールやらで分厚い目蓋となった眠い目をこすりながら、携帯電話のコールに応じた。「そろそろ出発ですよ」。味研の小柳社長からだった。もう朝食をとる時間的余裕は無い。工藤社長の計らいで食堂のおばさんに用意していただいたオニギリを受け取り、ホテルの駐車場へと急いだ。青空が清々しい。いざ、二戸(にのへ)の酒蔵・南部美人目指してスタンバイしている車へ乗り込もうとした途端、「お早うございます」と、天女の声。きっと幻聴に違いない。・・ではなくて、これが本物のスラリとした南部美人からの挨拶。当ブログ「酒王」のお隣のブログ「野菜王」の執筆者・宮田恵さんだった。

 白磁のような肌にエキゾチックな容姿は、「ロシア人と間違えられるンです」。本人のおっしゃるとおり、堂々たる野菜クイーン(女王)の風格を備えておいでです。あらかじめ、今回のツアーへの合流は予定に組まれていたものの、うっかりスケジュールから見落としていた。とにかく、岩手医科大学にお勤めの先生でもある宮田さんと蔵元へご一緒するはこびとなりました。


 南部美人の酒蔵に着いたのは、ちょうど仕込み作業が開始されたところだった。有り難いことに、久慈専務自ら蔵の案内をしていただいた。酒造りの技術は、蔵人でも目指さない限り近寄り難い職人技の世だ。仕込み水一つとっても、水質の如何で酵母の働きに差がでるという。


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 この蔵には仕込み水用のりっぱな井戸があり、天蓋の窓から中が覗ける。その光景は、酒蔵の心臓を見るようで神々しい。この適度なミネラル分を含んだ仕込み水が、南部美人の個性的な味わいにどのような影響を与えるのか興味津々です。


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 また、麹室(こうじむろ)での作業はなかなか見学するチャンスが少なく、貴重な体験だった。外気温は5度前後だったろうか、30度以上でコントロールされる麹室との温度差に戸惑う。種麹の入った袋が、蒸米の上でおまじないみたいに振られると、黄緑とも見える麹の胞子が煙みたいにたなびく。蔵人と麹菌のミクロの対話が始まる。


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 仕込み時期ならではの楽しみの一つに、醪(もろみ)を杓で酌んでもらっての味見がある。醗酵途中の若々しい醪を恐る恐るゴクリ。これも、酒蔵訪問者ならではの特権意識をくすぐる。車の運転をしなければならない宮田先生の悔しがり方は尋常じゃあなかったですね。


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 それにしても、海外進出まで果したメジャーな銘柄・南部美人。さぞかし大規模な敷地で機械化の進んだ酒蔵だろうと、想像していた。しかし、伝統の手造りへのこだわりは徹底しており、蔵の規模もそれほど大きくない。人気の南部美人は、十分な人手のフル回転によって量産されていた。


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