"角ハイ事情の今" 〜フラミンゴ編

2009年5月19日火曜日 18:08

 最近、パンク未修理のマウンテン・バイクは休止している所為もあって歩き回ることで運動量を補っている。初夏の風を受け、発汗機能も高まれば、特別に爽やかな一杯が恋しくなる。ちょうどそんなウィークデー、国立近代美術館のある竹橋から北の丸公園を散策したところで、九段下交差点近くの立ち呑み「フラミンゴ」(著書『東京・立ち飲み案内』に掲載)へ寄った。


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 こじんまりした店内ながら、ラフで落ち着いたムード。そう言えば"フラミンゴ"の語からは優雅な立ち姿しか思い浮かばない。うん、的を射たネーミングだ。さて、まずビールを頼もうとカウンターの方へ目をやれば、懐かしいサントリーの角瓶が並んでいるじゃあないか。おっと、ここにも"角ハイ"があるってことですね。それじゃあ、汗ばんだ身体と魂の欲求に従うほかないね。「フラミンゴ」では、カチ割り氷の入ったサントリー特製ジョッキでハイボールを供してくれる。おー、琥珀色の海にマッターホルンみたいな氷山が浮かんでいるぞお・・。ゴクリ、ゴクリ、そして、またゴクリ。まずは感無量というところで、しばし沈思黙考。


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 ハイボールに関する薀蓄(うんちく)も、しばしば耳にしてきた。とりわけハイボールの語源が面白い。ゴルフ・ボールを空高く打ち上げるスカイハイが由来という説。これは、イギリスの有名なゴルフ場で、ゴルフ客相手にソーダ水を売っていた美人姉妹と関連付けている。あるいは、鉄道の踏切装置に付属していた玉(ボール)をネタ話にした説や、背の高いトール・ドリンク用の器(ボール)で飲むからという説。いずれも、バーテンダーや薀蓄好きの酒飲みから酒場で聞いた話だが、幾つかの説は書物でも読んだ憶えがある。


しかし、最も説得力があるのは、かつてソーダ飲料を売っていたアメリカ西部鉄道駅のエピソードだろう。ギャングのアル・カポネが活躍した禁酒法時代と、カクテルを工夫したアメリカのサルーン(酒場)を舞台とすれば分かり易い。鉄道客は、喉の渇をソーダ飲料で潤す。その飲料の売り場は、入荷の合図として小さなアドバルーン(ボール)を掲げた。したがって、ソーダ水と、ジン、ウォッカ、ラムなどの蒸留酒(スピリッツ)がベースのカクテルを飲まれたのは自然。酒場の誰かが浮き上がったアドバルーンを想像して"ハイボール"てなところでしょうね。無論、ウイスキーのソーダ割りだって珍しくはなかったはず。もともとハイボールのベースは、種々のスピリッツが使われていたらしい。なんたって、戦後、東京の下町酒場では焼酎のソーダ割りをハイボールって呼んでいる。


いずれにしても、僕が初めてハイボールの名前と味を知ったのは、角瓶のハイボールからだ。東京の"角ハイ事情の今"を訪ねないわけにはいかなくなったのです。ハイ。


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