霧島・錦灘酒造〜近代焼酎のふるさとを訪ねて その2

2009年8月31日月曜日 1:31

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 蔵内の一角は試飲とイベント・ホールとなっており、若いスタッフたちが袴姿で控えていた。そのいでたちから察すると、焼酎造りに武道精神を反映させようという試みのようだ。薩摩藩の武の真髄・野太刀自現流(のだちじげんりゅう)の鍛錬法も披露してくれる。薩摩には示現流と表記する剣の流派もあるが、下級武士の実戦剣法として知られていたのは野太刀自現流の方だ。以前、南日本新聞の仕事で取材させてもらったことがある。鍛錬法の一つに、小枝を束ねたて据え置いた横木めがけて、太くて重い特殊な樫棒で打ち下ろしたりする。最初の一太刀で、気合もろとも敵の肩からの袈裟斬りが特徴。正に、この一刀両断は薩摩武士の必殺剣として、幕末の新撰組さえ恐れさせている。


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 無論、今は質実を重んじる精神修養のために受け継がれた。と、くれば"薩摩自現流"なる銘柄の焼酎がありましたね~。ヤッパリ。しかも、薩摩・島津公が幕府に献上したという米焼酎の一番搾り(花酒)を再現した一品。確かに、立ち上るフルーティーな香りに、歴史ロマンを感じても良いだろう。

 「この米、天然農法なんですよ」と、これまた淡々と夫人がおっしゃる。ならばとばかり合鴨農法の水田へ急行した。居るは居るは、棚田ごとに愛くるしい合鴨が・・。


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 しばらく水田端で合鴨家族の雑草取りを眺めていると、この農法を実践指導する鹿児島大学名誉教授・萬田正治さんがひょっこり現れた。のんびり見える棚田も、水利や合鴨を狙う野生動物など、種々の難問があるらしい。水田管理には科学技術と地道な作業を伴うものの、健康な生活人の温厚さを漂わせる人柄だ。じっくりと、米作りの教えを乞いたいものです。


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 ひとまず、西日の中に輝く田園風景を残して、今宵の宿、霧島温泉へ向かった。




<お知らせ> 錦灘酒造のご厚意で、10月24日(土曜日)、チェコ村のレストラン「リトル・プラハ」にて、楽しみ俳句会を開催します。ピルスナー、黒豚しゃぶしゃぶなど、飲み、食い放題で、参加費は3000円。俳句初心者でも、問題ありません。問い合わせ先:味香り戦略研究所、担当・小平(こひら)です。電話045-348-7201、ファックス045-333-8121


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霧島・錦灘酒造〜近代焼酎のふるさとを訪ねて その1

2009年8月29日土曜日 17:49

 抜けるような青空に光る雲と、濃い緑の木立を配した高原が広がり、象牙色の壁にくすんだ赤い屋根の中世風の東欧建築が立ち並ぶ。ボヘミア地方の田舎町を訪れたかと錯覚する。なんと、ここは鹿児島空港へもほど近い霧島市にある錦灘酒造のチェコ村だ。民間レベルのチェコ領事館も兼ねている。


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 錦灘酒造は、河内菌白麹の発見者、近代焼酎の父と呼ばれる河内源一郎の三代目が後を継ぐ。


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 もともと焼酎用の麹を扱う麹屋からで、現社長の山元紀子さんが受け継いでいる。さっそく、敷地内のレストラン「リトル・プラハ」で、酒造自慢のピルスナー・ビールを呷りながら、社長夫妻のチェコへのこだわりが伺えた。


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 チェコを代表するピルスナー・ビールの搾りたての爽快味はもとより、夫妻のユニークな人柄と波乱に富んだチェコ村誕生物語が圧巻。いやはや、淡々と語られるものの、薩摩隼人と薩摩おごじょの情熱は熱い。ちなみに、夫人はホッピービバレッジ社のミーナ(美奈)さんとは、親しい間柄という。二人のパワフルなビジネス・センスを思えば、さも有りなんだろう。


 チェコ人シェフが供する直営養豚所で飼育した黒豚ハムが、会食をいっそう滑らかにしてくれる。


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 黒豚は、自家農園産の瑞々しい野菜をそえて、しゃぶしゃぶで食すのが最高だと、夫人のオススメ。しゃぶしゃぶは翌日の楽しみに残して、恒例の焼酎工場見学となった。(続く)




<お知らせ> 錦灘酒造のご厚意で、10月24日(土曜日)、チェコ村のレストラン「リトル・プラハ」にて、楽しみ俳句会を開催します。ピルスナー、黒豚しゃぶしゃぶなど、飲み、食い放題で、参加費は3000円。俳句初心者でも、問題ありません。問い合わせ先:味香り戦略研究所、担当・小平(こひら)です。電話045-348-7201、ファックス045-333-8121


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酒王 奥飛騨を往く@髙木酒造

2009年8月22日土曜日 21:09

 岐阜県を愛知県側から北上すれば、平野の無い山間のインフラに沿って移動しなければならない。従って、旅人はたやすく方向感覚を失う。しかも、三重、愛知、長野、富山、石川、福井、滋賀と七つの県境に囲まれていて、山の向こうが、どの県かなど判らない。もっとも、埼玉県だって七都県に囲まれているものの、あちらは関東平野を目安とできる。

 今回の旅は、高山本線と飛騨川に平行するかの益田街道・ルート41号を北上。下呂市金山町に在る髙木酒造を目指した。創業が江戸中期の享保5年という老舗の酒蔵だ。吟醸酒"奥飛騨"の銘柄名で知られている。もちろん、"十四代"の銘柄で有名な山形県の高木酒造とは違う。

 

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 屋根つきの杉玉が吊り下がった黒格子の蔵構えは、岐阜県の「まちかど美術館」にも指定されており、どっしりとした風格のある趣。江戸の旅人気取りでお邪魔した。土間は、そのまま、ちょっとした酒蔵博物館の様相を呈している。酒宴の献立表の長大な巻物まであった。


sakao_08242.jpg さらに、土間の奥へと酒造蔵が続くは、続くは・・。地下道を抜けて焼酎蔵へ進めば、瓶入り麦焼酎「天地人物語」(25度)が、出荷用箱詰めの真最中。この麦焼酎がTV・大河ドラマのおかげもあって大人気らしい。
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 ついでに、酒造敷地の裏へ出たら、益田街道だった。街道沿いのドライブ・インや土産物店なども髙木酒造の経営。街道を挟んで迫る裏山も、やはり蔵の所有地という。「山裾に、合掌造りが見えるでしょ。あの中はレストランに改装してあるんですよ。移築したんです」と、髙木千宏社長がおっしゃる。そう言えば、合掌造りの白川郷は県の西北端に在りましたよね。


 少々、あっけにとられながらも再び入り口の酒蔵へ戻り、幾銘柄の酒を試飲させて頂いた。純米吟醸無濾過生原酒の「初緑」は、さすが女将さんのオススメとあって、深い山里に咲く笹百合のような妙味が潜む。おそらく南部杜氏の技が効いているのだろう。う~む、この酒のツマミは、何としようか・・。

 残念ながら宿泊する日程は取れず、滞在時間に余裕が無い。あの合掌造りの囲炉裏端か、下呂温泉の老舗旅館へ落ち着き、「初緑」を抱えて悩んでみたいなァー。西の白山、東の飛騨山脈と、数々の名峰を控えた万緑の迷路で、しばし途方に暮れました。


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キンミヤ──「下町酒場の名わき役」が生まれるその場所へ

2009年8月11日火曜日 17:22

 名古屋から関西本線で南下、四日市へ向かった。桑名を経てしばらく行くと伊勢湾が近くなってくる。もう直ぐ、四日市だ。やがて、車窓の眺めは、広大な石油プラント地帯へと変わっていく。無機的ながら、近代産業の心臓部の一つと言える。

 果して、四日市駅へ降り立つも、がらーんとしたプラットホームに人影もまばら。トイレは正面玄関を出て右へ、とか書いてある掲示板が目にとまった。一瞬、正面玄関なる文面に戸惑ったが、トイレは正面改札口を出たら見つかった。駅頭を見渡しても、全く殺風景。キンミヤ焼酎の宮崎本店は何処に在るのだろうと、不安になった。もっとも、中心市街エリアは、近鉄線の四日市駅周辺だと判明。早とちりも、いいとこだった。

 

 キンミヤ焼酎は、清涼飲料・ホッピー割りのスピリッツとして、東京下町酒場で不動の地位を築いた。下町酒場巡りに久しい僕が、宮崎本店へお邪魔するのは自然の成り行きかも知れん。工場は、住宅地の広がる平地に在って、所在場所が少々分かり難かった。とは言え、酒蔵は蒸し釜の高い塔を目指せば辿り着くものの、銭湯の煙突と勘違いした経験もある。

  

sakao_08111.jpg  宮崎本店は、古い佇まいの酒造棟があちこちに続いていて、敷地面積の全貌をなかなかつかめない。まずは、応接室にて六代目社長・宮崎由至さんと七代目・ご子息との面談からだ。キンミヤ焼酎との付き合いが古い所為か、初対面の感じがしない。ただ、華美な趣味を排し、質素を旨(むね)とする生活心情の徹底振りには驚いた。後で、美しい社長夫人に伺ったことだが、若い頃の宮崎社長の靴は、たった二足だったらしい。

 

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sakao_08113.jpgsakao_08114.jpg  酒蔵の施設も、やはり派手な感じがない。むしろ、古いものを大切に使い込む謙虚な姿勢が清々しく思える。見学の後、蔵の酒「宮の雪」などを試飲させていただくも、キンミヤ焼酎の話題で白熱する。ホッピーとの相性の良さは、味香り戦略研究所のデータでも証明済されている。また、飲み仲間の間では、かねてよりキンミヤ焼酎のラベルの人気が極めて高い。明るいエメラルド色と、金色の亀甲型に縁取られた"宮"のロゴ文字が鮮やかでモダンだ。「ずいぶん昔のことなんで、誰がデザインしたか分からないんですよ」とは、宮崎社長の談。さらに、「宝酒造の大宮久社長とは親友でね。同じ原材料と製法ながら、宝焼酎とは味が違うから面白い、なんて話をしたもんです」と、続けた。無論、味の違いは、水の違いに他ならない。鈴鹿川の伏流水を仕込み水としているが、おそらく伊勢湾に近いこともあって、ミネラル分を含んでいるような気がする。焼津の酒造メーカー「磯自慢」も、同じく海のそばで、すっきり味がウリだ。ドライな口当たりは、ミネラル分を含む硬水の影響が知られている。あれこれと酒談義が弾むも、「そろそろ、話の延長は居酒屋で・・」と、一同の目が輝いた。

 

sakao_08116.jpg 一軒目、キンミヤ御用達の日本酒場「大感謝」へ、二軒目からは、社長夫人を交えて松坂肉を肉料理「徳寿」にて堪能。取材拒否で有名な店の主も、手を休めて挨拶して下さった。

 

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sakao_08118.jpg三軒目は、四日市名物・一口餃子で有名な中華料理「公園」へ。これほど小粒な餃子は初めて。ビールで流し込む。仕上げは、ワインと創作料理自慢のワインバー「flapper」へ。これが旨くて、白ワインのお代わり、お代わり・・。いいかげんに"お帰り"ってとこで、めでたくお開きとあいなりました。

  

sakao_08119.jpgアッ、五軒目に行った「かめ八寿司」を忘れていました。いやいや美味なる旬を、にぎっていただけたのに申し訳ございません。


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