ウイスキーが、お好きでしょ......盃(ハイ)

2009年6月24日水曜日 16:26

 神保町の会員制バー「人魚の嘆き」では、はからずも二階の座敷席の予約ができた。掛け軸と漢詩の江戸屏風、調度品は彩子ママのコレクション。皆、おごそかに和の座卓の周りへ腰をおろした。すると、どこからか女性の歌声が流れてくるではないか。やれやれ、ついに幻聴を聞くまで酔ってしまったらしい。と、ぼんやり耳を澄ませば、「ウイスキーがお好きでしょ・・♪もう少~し・・」この気だるく男心を誘惑するフレーズとメロディーは、紛うかたなき石川さゆり嬢の、例の曲じゃあないか。恥ずかしいが、かつてレコード店の前で逡巡の末、意を決して買ったカセット・テープに収められていた歌だ。つまり、CDの出回る以前のこと。もっぱら洋楽一辺倒だった僕が、演歌調で女流歌手のカセット・テープを購入したのは、後にも先にも一度きりだろう。登山へ向かう車中でテープを回し、人知れず悦に入ったものだった。孤独や、ふとした油断とでもいうような心の隙間へ、透きとおった音色で流れ込んでくる。ウイスキーが"命の水"なら、あの歌声は心の傷を癒す妙薬みたいだった。

 「これ、角瓶を買ったときのオマケです」と、俳句仲間の伊勢君が、音源付き角瓶ミニ・ボトルを掲げて見せた。してやったりとばかりの笑みがミニ・ボトルの脇にある。そのキャップを押すと、曲が流れる仕組みで、音質もいい。いやはや、ものの見事に一本取られました。

sakao_06241.jpg そういえば昨今、国民的に親しまれている女優・小雪さんのテレビCM(角ハイボール)でも使われている。しばらく曲の話題で盛り上がっていたら、トントントンと二階へ昇ってきた手伝いの女の子が、炭酸とサントリーの角瓶を漆塗りの座卓に載せた。今宵、酒宴の仕切り人、誰だか察しは着いたが、どこまで手回しが良いのだろう・・。

 

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