旬どき・うまいもの自慢会in東京

2009年9月12日土曜日 16:55

 各地の地酒に、郷土料理から選んだ一品を合わせる。日本酒ファンとしては、なんとも有り難いイベント「旬どき・うまいもの自慢会in東京〈第1回夏の集い〉」が、酒造会社10社によって開かれた。会場は、東京国際フォーラムB1にある和食と酒のレストラン「宝」だ。以前にも、日本酒・鑑評イベントの打ち上げ会でお邪魔したことがある。


01_R0011266_2.jpg

 イベントの進行役は、高知県・司牡丹酒造の社長・竹村昭彦さん。高知弁で言う"おんちゃん"。イベント慣れした豪放らいらくな人柄は、いかにも土佐っぽらしい。南国的で大らかな気質の持ち主ながら、実は都会的センスに溢れるインテリ。


02_R0011264_2.jpg

 この蔵元が、幼年期を過ごした僕の郷里と近い佐川町に在った所為か、初めて遭遇した酒の味も司牡丹だった。今を思えば、因縁浅からぬ蔵元かも知れん。

 ま、それはさて置き、イベントの内容がふるっている。さすが、酒飲みに合わせた"うまいもの自慢"とあって、ツマミ選びが渋い。


 まずは、新潟の「越乃寒中梅・純米吟醸」。豪雪地帯の風土を生かし、低温でじっくりと醗酵させた芳醇な味わい。てな、コメントを加え始めると商品パンフレットみたいになるので、できるだけ小平カメラマンのスナップ・ショットに頼ります。

 で、ツマミは枝豆、その名も"湯上り娘"。甘い土の香りのする茶豆風味が、フワっと鼻先を撫でる。


03_寒中梅.jpg


 お次は、高知県の「司牡丹・船中八策」、超辛口・特別純米酒ときた。キレ味の良さは、大酒を飲む土佐人に合わせた昔の土佐杜氏の伝統と思われる。

 無論、ツマミは、土佐を訪れる観光客も唸る鰹の塩タタキ、赤玉葱のスライス添え。

 銘柄名とした、維新国家構想・8か条"船中八策"は、その草案を坂本龍馬との説が有力ながら、異論を唱える歴史家も居る。なんて、思いを馳せる間も無く次の酒が来た。


04_船中八策_R0011271.jpg


 長野県は「真澄・吟醸生酒」。すっきりした味には定評がある。慣れ親しんだ味わいに、もう一杯。あっ、まだ三っつ目の蔵だった。おさえて、おさえて。

 ツマミは、信州らしい地野菜の盛り合わせ。モロッコ・インゲン辛子醤油和え、アスパラ塩茹で、もうひとつ、セロリの胡麻油炒め。そういえば、信州の酒旅で三日間、山菜料理尽くしの経験がある。


05_眞澄.jpg


 東京は奥多摩の「澤乃井・純米大辛口」、超辛口・純米酒。この銘柄も"超"の字の付いた辛口だ。含み感にやや重さを感じ、淡麗辛口のキレ味とは異なる。やはり水の違いか、軟水寄りの辛口とでも表現したくなる。

 ツマミがTokyo-X(トウキョウ・エックス)と呼ばれる東京都の開発した豚の角煮・チンゲンサイ添え。良質の肉を持った数種の豚から開発した、いいとこ取りの豚肉。聞くだけで贅沢なお味でした。でも、決め手は調理の腕でしょうね。


06_澤乃井.jpg


 栃木県から、「開華・純米吟醸生酒」。なかなか品のいいお酒です。と評すのもおこがましいのですが、楽しい語らいも相まって、もうほろ酔い。いや、それ以上だったかも・・。

 ツマミは、那須の白美人葱と味噌。白肌のほんのり甘い指に、イヤ、丸葱に齧りついたような覚えが・・。


07_開華.jpg


 三重県は、「若戎・義左衛門・三重山田錦」、純米吟醸酒。六っつ目の蔵の酒となれば、仕込み水を飲んで中休みしなければいけません。折り良く、若戎酒造の重藤邦子さんが説明に廻ってこられた。酒は、昔ながらの手造りで醸した限定品とのこと。おごそかに満たしていただいたグラスを、やっぱりクイっと飲んじゃいました。フルーティーな香りは、笑顔の重藤さんから漂って来たのだろうか。

 ツマミが鮎の開き・干物とは珍しい。薄い塩味と芳ばしさは、相性だって良かったはず。


08_若戎.jpg


 宮城県は、ご存知「浦霞・純米生酒」。酒飲みの入門酒としても、広く知れわたっている。僕にとっても入門酒でした。でも、イベント会場の時は、さしつさされつの佳境にあり、リアルタイムのコメントを浮かべるどころではありません。写真から、想像して下さい。

 ツマミは、三陸ホヤの塩焼き。味が思い出せない。


09_浦霞.jpg


 山口県は「五橋・純米生酒」。きっと、旨そうに飲んでたんだろうな~。

 ツマミは、瀬つき鯵のなめろう。僕の作る鯵のなめろうは、きざむ程度にたたきます。たしか、この時のなめろうとは違った味のようでした。


10_五橋.jpg


 秋田県は「天寿・米から育てた純米酒」、純米吟醸生酒。香り、旨味と、バランスが良くて品がいい。天寿の古酒大吟醸ともなれば、寝かせるほどに、とろみのあるブランデー味へと近づく。少なくとも僕の記憶には、そう刷込まれている。

 ツマミは、秋田由利海岸産・天然岩牡蠣、ポン酢。・・・・。


11_天壽.jpg


 愛媛県は、長い銘柄名「梅錦・語り尽くせど飲みあきない」純米吟醸酒。どうやら、会場の半数は"飲みあきない"ので酔ってしまったらしい。

 ツマミに海老ちくわ・鯛ちくわ。まあるく会も収まりました。


12_梅錦.jpg



 女性客が多くて黄色い笑い声の絶えないイベントでした。次回の開催が、待ち遠しい。また、「旬どき・うまいもの自慢会」は、蔵元が個別にも開催している。



霧島・錦灘酒造〜近代焼酎のふるさとを訪ねて その3

2009年9月6日日曜日 17:29

 霧島温泉の露天風呂でくつろぎ、湯船酒を軽く頂いてから夢の中へ。朝食後、霧島神宮を参拝。さらに、噴火で焼失したという霧島神宮跡へ登った。神社の故事は、ニニギノミコトが天孫降臨したと伝えられる高千穂峰の頂上に始まり、霧島山の噴火で焼失するたびに場所を移したようだ。今の社殿は1484年に選ばれた地とされている。


01_IMG_7001_JPG.jpg

02_IMG_7037_JPG.jpg


 記紀神話と晩夏の蝉時雨が錯綜する高千穂連峰を脳髄に留めて、一路、鹿児島市内へ向けてUターンした。途中、錦灘酒造のチェコ村にある「リトル・プラハ」での昼食、黒豚しゃぶしゃぶは、三人前のお代わりまでする始末・・。


03_DSC_0016_JPG.jpg
04_DSC_0018_JPG.jpg


 鹿児島人の多くは、今でも西郷隆盛"西郷さん"を敬愛している。実像写真が残されていないのは残念なものの、市内に堂々たる西郷像もある。西南戦争の弾跡が生々しい城山の石垣や自刃跡など、そこここに足跡を辿れる。明治維新後、新政府の中枢で活躍した大久保利通は人気が無い。むしろ、西南戦争で西郷さんと運命をともにした中村半次郎の名が挙がる。"人斬り半次郎"の異名を持ち、やはり野太刀自源流の使い手とされている。


 歴史の裏舞台はさて置き、もう一人の幕末のキー・パーソンが薩摩藩、十一代藩主・島津斉彬(しまづ・なりあきら)だ。西洋ツウだった曽祖父・島津重豪(しげひで)の影響が大きく、近代技術の導入に惜しみなく財を費やした人物。重豪に付き添って、医学、植物学など博学だったシーボルトとも会見している。

 そんな斉彬の生きた時代を身近に感じられる観光スポットがある。錦江湾に浮かぶ桜島を借景とするかつての島津家の別邸、仙巌園だ。斉彬が、近代工業生産拠点として始めた集成館事業の発祥地でもある。大砲造りに必要だった反射炉跡や、近代工業技術の足跡を辿れる博物館・尚古集成館が併設されている。斉彬の事業は、明治政府の目指した富国強兵、殖産興業路線のさきがけとなった。この史実の詳しい説明をしてくれるのが、仙厳園・尚古集成館の学芸員(仙厳園プレミアムツアーガイド)・有村さんだ。すらりとスマートで知的な薩摩おごじょだった。


05_DSC_0187_JPG.jpg

06_IMG_7225_JPG.jpg


 それにしても斉彬は、飲食、造園、文芸に至る優雅な趣味人である一方。ジョン万次郎を保護するなど、近代日本の未来を見据えた先見性とビジネス・センスに長けた藩主だったんですね。 

 薩摩切子を産んだ集成館の技術といい、ボヘミヤ地方の町を思わせる酒造といい、酒好きならではの鹿児島旅ルートでした。〆の一句。


「ボヘミヤの 秋燃え残る 紅切子(べにきりこ)」(類)





<お知らせ> 錦灘酒造のご厚意で、10月24日(土曜日)、チェコ村のレストラン「リトル・プラハ」にて、楽しみ俳句会を開催します。ピルスナー、黒豚しゃぶしゃぶなど、飲み、食い放題で、参加費は3000円。俳句初心者でも、問題ありません。問い合わせ先:味香り戦略研究所、担当・小平(こひら)です。電話045-348-7201、ファックス045-333-8121


ラベル: