酒場放浪記
2009年4月14日火曜日 18:49
先日、多摩川の河川敷に残る茶店「たぬきや」へお邪魔した。新宿からだと京王相模原線・稲田堤駅の手前に位置する。茶店の表にあるオープン・スペースの縁台から、中州の菜の花がそよぐのを眺めて飲むビールは格別。茶店の女将の話によれば、カラシ菜の方が多いそうな......。いずれにしても菜の花で一句を詠むほかない光景だった。しかし、こののどかな風景は、あまりにも当たり前すぎる。しばし悩んだところで、高校生の初々しいカップルが、脇の土手に遊ぶのを見つけた。小柄な少女が、長身の少年の身体を両腕に捕えている図だ。そこで、「菜の花や ガールボーイを 抱き締めり」とした。少年と少女をテーマの名詩、名句は沢山あるものの、その二語を五・七・五の語調へ収めるのが難しい。そこで、〝ガールの(が)ボーイを″とし、格助詞の「の」を省略して俳句に整えた。まあ、平凡ながらも一句をモノにしたところへ、俳句仲間の伊勢幸祐くんが来た。折しも、中州の菜の花のは夕日に照らされ、東の空の満月を幸祐くんが発見。まさしく、与謝蕪村の句「菜の花や月は東に日は西に」そのものだった。
ところで、4月20日にはBS-TBSの番組『吉田類の酒場放浪記』(TBSサービス)の単行本が発売の運びとなった。最初の収録店、吉祥寺の「いせや総本店」(旧店舗)から、順に30店舗(閉店を除く)分をまとめたものだ。つまり、シリーズ第一弾となるだろう。初期俳句の30句は一部をオリジナルの句に校正することができた。一筆書きのカット・イラスト30点も添えている。書店の店頭では、顔写真の目立ちそうなカバーに仕上っているので、少々おもはゆい心持だ。