思い出の酒場へ

2018年10月31日水曜日 17:59


思い出の酒場へ 
与謝蕪村の句「菜の花や月は東に日は西に」
 
 類さんがまさにこの句の光景を体感したのは、稲田堤の『たぬきや』さんで呑んでいた時のこと。月と太陽は多摩川の中州に咲く菜の花を照らしていたそう。
 多摩川の稲田堤で83年営業していた『たぬきや』さんは1028日でお店を閉められました。開店当時は堤にずらりとお茶屋さんが並んでいたそうです。時の流れに店は減ってゆき、気が付けば『たぬきや』さんただ一軒となっていたそうです。

散歩やサイクリングをする人の休憩の場として、テラスでは犬と一緒に休む人もいて、ほのぼのとしてゆったりとした時間が流れる酒場でした。建物の中では、休日にはテレビの競馬中継を流していました。散歩を理由に家を出てきたと思われる近所のお父さん方は、ビール片手に寛いでいました。類さん主催の「舟」の句会の会場として使わせてもらったこともあります。あまりに居心地良く、夜遅くまでお邪魔してしまいました。またインタビューや取材の場としても使わせていただきました。
 
酒場ブームと言うけれど、巷に酒場は数あれど、ここで是非飲みたいと訪れる人々がいたこと、また閉店を知って名残を惜しむ人々をみて、どうしたって穏やかな居場所を人間は求めるもんなんだなあとしみじみ、本当にしみじみ思ったのでございます。